白いトレーに、頼んだケーキとドリンクを乗せて、席に着く。
そしてふたりで向き合うと、合図もなくお互いの声が重なった。
「「いただきます」」
小坂が嬉しそうに顔をほころばせながら、フォークで掬ったショートケーキをぱくっと口に含んだ。
俺は自分のフルーツタルトを食べるのも忘れて、そんな小坂の反応をじっと見つめてしまう。
「どうだ?」
その答えは、彼女の瞳の輝きが雄弁に語った。
「んん~っ!」
なくなりそうなほどに目を細め、頬を押さえておいしさを表現する小坂。
そんなふうに素直に感情を伝えてくる彼女を見ていると、勝手に目尻が下がってしまって。
今までテレビで見たどのリポーターよりも、味覚に訴えかけてくるように感じられる。
「すっごいおいしいんだけど! フルーツタルト、最高!」
「よかった」
「榊くんも! 食べてみて!」
スイーツを食べてテンションの高い小坂に促され、ショートケーキに切り込む。
やわらかいクリームとスポンジがふわっと切れていく感覚。
そして一口大の大きさをフォークに乗せ口に運ぶと、途端に優しい甘さが口の中に広がった。


