「あっ、こら! 待ちなさい!」 教頭の怒声がどんどん遠ざかっていく。 しばらく必死でペダルを漕いでいたけれど、多分張り詰めた糸がぷつんと切れた音がしたのだと思う。 「ふはっ」 「ふふふっ」 顔も合わせていないのに、俺と小坂が吹き出したのは同時だった。 こんな見た目だけど校則違反なんてしたことなんてない。 なんてスリリングな逃避行だ。 「やばいね」 「やばいな」 「呼び出しかな」 「かもな」 「怒られる時は一緒に怒られようね」 「ああ」