「じゃあ、みんなの立役者なんだね」
一切の淀みもなく輝く小坂の声。
どう答えるか一瞬逡巡し、それから胸の奥から答えを引っ張り出してくる。
俺も視線を手元に落としたまま、なるべく感情が含まれないようにしながら。
「だれも俺のことなんて気にしてねぇよ。感謝を求めてやってるわけじゃないけど、たまにちょっと惨めになる」
なんてわがままなんだろう。
けれど、だれかに認めてほしい、そんな欲求が喉を嗄らす。
嫌われることよりも、無関心が、一番つらい。
するとその時、頭になにかが当たった。
顔を上げれば、小坂が俺の頭をぽんぽんと優しく叩いていることに気づく。
小坂は柔らかい眼差しに俺を映していた。
「榊くんは偉いね。陰でだれかのために頑張る榊くんのこと、見てる人は絶対にいるよ。たとえば、私とかね」
真正面から肯定され、俺は言葉を詰まらせた。
その清らかな瞳は、俺を映してくれる。
小坂に見つめられると、俺が今ここにいることを思い知る。
透明人間ではなかったことを思い出させてくれる。
俺はなんて言ったらいいかわからなくて、小坂を見つめるにはあまりに眩しくて、視線を再び手元に落とした。
「……さんきゅ」
「へへ。さぁ、残りも頑張るぞ!」
照れたように笑って、小坂が再び作業を開始する。
俺は下唇を噛みしめ、そしてさっきの小坂の言葉をじんわり心に馴染ませた。


