もし他のクラスメイトからの申し出だったら、頑として断っただろう。
だれかとふたりで作業するなんて、居心地が悪くて息の仕方も忘れそうだ。
でもなぜか、小坂には流されてしまう。
まぁいいかとどんな感情も無力化してしまうというか、成す術を講じる隙を作らせてくれない。
けれどそこに不快感は生まれないから不思議だ。
「私はなにをすればいい?」
「じゃあ、3枚1セットを作っていってほしい」
「了解であります。よーし、頑張るぞ」
気合いを入れるようにひとりごち、まるで作業さえも楽しむみたいな小坂は、やっぱり変なやつだ。
小坂みたいな子は生きるのも楽しいんではないかと、そんなことを思う。
同じ人生だとしても、小坂みたいに生きられたらどんなにいいだろう。
楽しんだもん勝ちとよく言うけれど、まさにそのとおりだ。
小坂に遅れるようにして俺も席に着くと、自分の仕事に取りかかる。
「こういうこと、いつもやってるの?」
視線は手元のプリントに落とし、手を動かしながら、ふと小坂が問うてきた。
「たまにな」
……そうしないと、自分の存在意義がわからなくなるから。
だれかのためではあるけれど、自分のためでもある。
だれかの役に立って、まだここにいてもいいんだと自分で自分に思い聞かせてた。


