プリントを自分の机に置くと、ポケットに入れて持ってきたホチキスを取り出す。
そして3枚1セットでプリントを綴じていく。
パッチン、パッチンと、ホチキスの音が無人の教室に響き渡る。
開け放った窓の外からは、どこかの部活の掛け声が聞こえてくる。
野球部かサッカー部だろうか。
ひどく地味な作業だけど、頭を使わなくていい点では楽だ。
とはいえ、半分を綴じ終わった頃、さすがに右手が疲れてきた。
単調な作業だから、つい休憩をとることを忘れてしまう。
椅子に背をもたれ、「ふー」と深く息を吐いた時、開けた窓から勢いよく風が吹き込んできた。
まずいと思った頃には時すでに遅し。
俺をあざ笑うように、風がプリントを攫った。
ふわふわと舞うプリントを横目にしながらも、慌てて窓を閉めに走る。
そして床に落ちてしまったプリントを拾っていると。
「あれ、榊くん?」
教室のドアの方から、そんな声が聞こえてきた。
はっとして上体を起こし、そちらに視線をやれば、そこには小坂が立っていた。
もうとっくに帰ったと思っていた小坂の登場に、俺は一瞬呆気にとられる。
「なにしてるの?」
興味津々といった顔で近づいてくる小坂。


