「隣、いいかな」
「ああ、いいけど」
「ふう……。こんな穴場を知ってるなんて、やるねぇ」
隣に座って気持ちよさそうに伸びをしている小坂に対し、その実俺の内心は穏やかではなかった。
真剣で、かつふたりきりの時でなければいけない頼み事あった。
「ハンカチ、ありがとな」
「わざわざアイロンまでかけてくれたんだ。なんだかごめんね。でもありがとう」
ハンカチを返しつつ、隣の小坂に改まるように向き合う。
「それで……昨日のことなんだが、だれにも言わないでほしい」
彼女がべらべらと言いふらすたちではないとはわかっていたけれど、絶対にないという確信がほしかった。
親や担任なんかに話されでもしたら、厄介なことになるのは目に見えているから。
なんでも理解したような顔で形だけの偽善を押し付けられるなんて、考えるだけで反吐が出る。
すると小坂はぶらぶらさせていた足を地面に着け、青空に向けていた視線を下ろし、こっちを見てきた。
予想外にもいたずらっぽい笑みを口にのせ、そして。
「それじゃあ交換条件出してもいい?」
「……交換条件?」
「自分の命を捨てたと思って、君の一週間を私にくれないかな」
いきなり、そんな突飛なことを提案してきた。


