けれどいつまでもこうしているわけにもいかない。
俺は重い体を起こしてベッドから出ると、ハンガーに掛けてある制服に袖を通していく。
胸にかかったままのペンダントは外せないまま。
……やっぱり、謝ろう。
許してもらえるかわからないけど、ちゃんと目を見て、誠意を尽くして。
その時ふと、俺は薄いカーテンの外が白んでいることに気づいた。
本当に何気なく窓辺に歩み寄り、一気にカーテンを開ける。
シャッと軽い音をたてて視界が開ける。
「雪……?」
――そこに広がっていたのは一面の銀世界だった。
まるで天使の羽のように、止めどなく空から降ってくる雪。
7月なのに雪が降っている、その状況に驚く間もなく、はらはらと舞う雪が、ふと記憶の中のある景色と重なった。そして。
『――悠心』
俺の名を呼ぶ彼女の声が、鼓膜に甦った。


