俺は視点の定まり切らない瞳で、カメラフォルダを開いていた。
高校に上がってすぐ購入したスマホには、日々の中で記録するものなんてなく、たまに動物や景色の写真が保存されているだけで、ほとんど空っぽだった。
けれど小坂と出会ってから、俺の世界が色づいたように、カメラフォルダも小坂の色で染まっていた。
友達と話しながらお腹を抱えて笑っている小坂、
キッチンに立つ小坂の後ろ姿、
浴衣姿で金魚すくいをする小坂、
おいしいものを頬張って表情をとろけさせている小坂。
こっそり撮っていた、小坂の日常を切り取った写真たちがそこにはある。
何度も俺の心を照らしてくれたあの笑顔を守りたいと思ってた。
それなのに翳らせるどころか、泣かせてしまった。
「ごめん……」
ぽつりと唇からこぼれ落ちた声は、だれに届くこともなく空白に溶けていく。


