【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ





「いい映画だったなぁ。すっごく感動しちゃったよ」


光が差し込む並木道を歩きながら、小坂がすんと鼻をすすり目の下を拭う。


「ああ。よかったよな」


けれど俺の方はと言えば、ひらがなをなぞるだけのような相槌になってしまう。

全然集中できなかったからだ。


「ポチのあの愛くるしさはちょっと強すぎるよね。きゅるきゅるのおめめがたまんない」

「わかる」


小坂は相当お気に召したようだ。

いつもより少し早口で、熱がこもったように雄弁に語る小坂を見ているだけで、しっかり楽しむことのできなかった映画の分も満たされた気がする。


「やっぱり映画は映画館で観るに限るね。音響の迫力っていうのかな、臨場感があってさぁ」


小坂の言うことはよくわかる。

俺も予告を見て気になった映画は、映画館で鑑賞派だ。

部活帰りに映画館によく足を運んだっけ……。


けれど考えごとにも相槌にもぼんやりと身が入らないのは、どう切り出すか悩んでいるからだ。