沈黙を、彼女は肯定と捉えたらしい。

俺の意思を深く受け止めるように顔を俯ける。


けれど、彼女にとって、俺の事情なんてあくまで他人事に過ぎない。

これでは、彼女に不要な重荷を背負わせることになってしまった。

口先だけでもいいから、さっさと否定しておけばよかったと悔やむ。


「ほら、帰るぞ。こんなところにいたら親御さんも心配する」


深刻な空気を断ち切るように俺は立ち上がると、彼女に腕を掴んで立たせる。


「悪かったな、変な話して」


うんともすんとも言わない彼女のことが心配になって、顔を覗き込もうとした時。


「……決めた」


凛とした声でそう言って、彼女が顔をあげた。

そして真正面から俺の目を見据えてくる。


「また明日も私に会うって約束して。そしてこのハンカチを私に返して」

「え?」


俺に白いハンカチを押し付けると、口を挟む隙も作らせないまま、半ば強引に俺の小指に自分の小指を絡めてきた。


「絶対、約束だからね」


こんな指切りげんまんをするなんて、いつぶりだろう。


未来の約束を取り付け、そして彼女はなぜか満足そうに笑ったのだった。