ずっと、好きなんだよ。

「玲音は知らないかもしれないけど、お姉ちゃんにはね、高校生の時お付き合いしていた人がいたの」


「えっ...」



全く知らなかった。


生徒会に学級委員、バイトに勉強、家事、お見舞い...と常にやることを抱え、青春する暇もなく日々を過ごしているようなイメージだったから、アネキにカレシがいるとは夢にも思っていなかった。



「その人ねぇ、お姉ちゃんには黙って母さんのお見舞いに来たことがあって。言われた言葉今でも覚えてる。俺が大好きな美玲さんをこの世に送り出してくれてありがとうございます。お義母様が早く良くなられるように祈ってます。そう...言ってくれたの。音楽やっててね、自作の応援ソングのデモCD持ってきて聞かせてくれたり...。ほんと、真っ直ぐで素敵な子だった」



アネキにカレシがいたとは...。


ほんと、隠し事が得意だよな、アネキは。


自分を犠牲にしてまでオレたちに尽くしてきたくせに、1番大事な局面になって心配かけるなっての。



「その人今何してんだよ?そんな良い人がアネキのこと置いてどこに...」


「高校3年生の秋頃にお父様のお仕事の関係でアメリカに行っちゃったのよ。それからどうなったかは正直母さんも分からない。だけど、美玲があの子のことをきっぱり忘れて結婚なんて出来ないと思うの。これは母親の単なる勘でしかないんだけど...美玲の1番は多分あの彼なんだと思う。その人のこと話す時が1番キラキラしてたから」


「そっ、か...」



別に好きな人がいる...


その人のことを忘れられない...


だからあんな顔してたんだ。


笑ってるようで笑ってない、


あんな複雑で


いつもからっとしたアネキには似合わない


あんな表情を。



「でも、美玲が決めたことなら母さんは信じるしかない。両家顔合わせとか式場の準備とか、結婚てなると本当に色々やらなくちゃならないことがあるから、玲音もお姉ちゃんのこと信じて支えてあげて。母さんよぼよぼで頼りないから」


「そんなこと、言うなよ...」


「玲音こそ、そんな顔しない。ほら、笑って笑って。今日は午後から大学でしょ?晩御飯にお母さん特製のオムライス食べさせてあげるから、頑張って行ってらっしゃい」



そう言われたら、頑張るしかない。


母さん以上に頑張ってる人はいないのに、それを越えるくらい頑張らなきゃならないのは結構ハードだけど...


頑張ろう。


むしろ頑張っていた方が今は気が紛れるから良いかもしれない。


そう思い込んで、オレはまた蘇りかけた感情に思いきり蓋をして1日をスタートさせた。