「は?何言ってんの?バッカじゃないの?!どの面下げてここにいんの?!ってかなんでいんの?!は?!キモいんだけど」



バイト先の帰り道、


オレは2年ぶりにかつて浴びせられた、


いや、それ以上の罵声を全身に浴びていた。



「由紀ちゃん、落ち着いて...」


「落ち着けるわけないでしょうが!コイツは奈和を散々苦しめた悪魔だよ?!地獄に突き落とされようがグツグツ煮られようがあたしがアンタを許すわけないでしょうが、コラッ!」



あまりの大声に道行く人が振り返る。


火に油を注いでしまったのは確かだが、これはオレのしたこと。


鎮火させて帰らねばならない。


オレは意を決して口を切った。



「高校時代はほんとに悪かった。心の底から反省してる。一時的な感情の高まりで言ってはいけない言葉だったし、朽木を傷つけた罪は大きい。だから...」


「あーのーねぇ、時効なの!とっくに奈和はケリつけて前向いて生きてるの?!ほんと今さらなの!ってか、アンタさぁ、カノジョいるでしょ?天使みたいな子。あの子振って奈和に乗り換えるの?」


「別にそういう意味じゃ...」


「はっきり言ってアンタってさ、いっつも中途半端だよね?カノジョいるのにいつまでもいつまでも過去のことに拘ってさぁ。カノジョと別れて奈和を幸せにしてくれるの?してくれないでしょう?出来ないでしょう?栄木さんいるもんねぇ。栄木さんいるのに昔の女引っ張り出してきてさぁ、それもそれで最低だと思わない?栄木さんに対しても不誠実だよ?!
...ねぇ?もう関わんないでくれる?今のアンタと関わっても誰も幸せにならないし、アンタ自身も誰も幸せに出来ないよ。もっと自分自身磨いて出直してきなさいってーの?!...はぁ、疲れた。寝るわ」



森下由紀は言いたいことをぶちまけた後、酔いが一気に回ったのかそのまま眠りに落ちた。


カレシの柴田さんが何度もペコペコと頭を下げてくれたけど、オレの方こそすみません...だった。