ずっと、好きなんだよ。

ロスタイムをくらい、時刻は22時30分。


運良く急行に乗れれば15分で最寄りまで着く。


交感神経が高まって寝つきが悪くなるからあんまり走りたくなかったのだが、仕方ない。


オレは走った。


居酒屋が立ち並ぶ見慣れた道を通りすぎる。


はず、だった。



...嘘、だろ?


...いた。



オレの視界にはっきりと映り込んだ。


見覚えのある立ち居振舞いをしている。


きっと、あれは...森下由紀。


煤けた赤い暖簾の向こうから今日はカレシと仲良く腕を組んで出てくる。


昨日の反省からか今日は酔い潰れてはいないようだが、それでもフラフラしていて介助がないと危険な感じと見た。


風の噂で聞いていたカレシはやはり優しくて誠実そうで彼女にはもったいない...なんて言ったら、あん時みたいに罵声を浴びさせられそうだから言わないが、とにもかくにも良い人そうだった。


そのカレシのポジションに昨日はアイツが...いた、はず。


黒髪ポニーテールなんて学生時代に1回見たか見てないかくらいだったのに、森下を見送った後慣れた手つきで結び直していた。


髪...伸びたんだな。


それに、大人っぽかった。


最後に見たのが卒業式。


しわしわでびしょびしょになったブレザー姿。


あれから2年。


彼女は立派な社会人になっていた。


両親の離婚で大学生になるはすだった彼女は社会人にならざるを得なくなった。


誰よりも早く大人になることを強いられていた。


本当は昨日じゃなかった。


会うはずだった。


もう少し早く。


彼女が20歳になる前に。


成人式の後の同窓会で。


久しぶりに小学校のメンツで集まる機会だからって、あの日は夏音もウキウキしていた。


色んなことあったけど、


アイツも来るだろうって、


来たら高校時代のあんなことやこんなこと全部忘れて笑い合おうって、


そう決めていたのに、


アイツは来なかった。


きっと、来られなかったんだ。


オレのせいで。