夏音が帰ってくるその日までの宿題があった。


小学生の頃からそこそこに何でもこなし、平均点以上の成績をおさめていたオレは宿題を先に終わらせて残りの時間を遊びやその他の勉強に当てるような、意外にも真面目なヤツだった。


そんなオレが今まで後回しにしてきた宿題がある。


答えを出したら今までの全てを壊してしまいそうで怖くて、勇気が出ずに解こうとしなかった問題だ。


あの日再び甦った気持ち、


そこから生まれる熱を正直どうしたら良いか分からなかった。


病み上がりではまともな思考にもなれず、気づけば夏音の帰国日前日になっていた。


最愛の人との結婚が決まりルンルン気分の姉の鼻歌が聞こえて来る中、オレは思考を冴え渡らせるべく外に出たくなって、散歩と言い、家を出た。


9月上旬のまだ生ぬるい風に吹かれながら、オレは物思いに耽る。


近所の公園までの道のりが長く感じるのは亀の歩み故だ。


オレはまたぼんやりと思い出す。


あの日の朽木の言葉を。


幾度となく側に感じてきた存在なのに、


朽木からも


自分の心からも


目を反らして


やっぱりオレはどうしたかったんだろうって、


そんな疑問ばかりに捕らわれる。


変に絡めてしまったのは、


自分を見えなくしてしまったのは、


きっと...



「オレ、なんだよな...」