この男はプライベートな空間に何の躊躇もなく、入ってくるのだ。
勝手にわたしの部屋に入ってきたりする。
今は注意するのも疲れてしてない。
だから、わたしは毎日こいつのモーニングコールを受ける羽目になっている。
しかも直接だ。勝手に部屋に入り、ベットの上にのり、勝手に声を掛けてくる。
欝陶しい。
「っ。やめて。」
「んふふ。いやだぁ。」
急に顔を近づけてきた。整った顔が目の前にある。
「うぅ。」
「かわいぃ。」
どこか優しくて甘い声がすごく恥ずかしい。
近い。近い。うぅ。離れて欲しいのに上手く声が出ない。
嫌なはずなのに抵抗できない。
かぷっ。
「ひゃぁ。」
耳に暖かくて柔らかい感触がくる。
えぇ。耳が噛まれてる。直接当たる吐息が色っぽくて、恥ずかしくて。
なんだか体に力が入らない。
「わっ。もうこんな時間だね。
早く準備しないと遅れちゃうよ。」
いつのまにか、ベットから立って扉から出ていたらしい。
扉の向こうからひらひらと手を振る楓惟にイライラする。
わたしが遅れかけるのはお前のせいだよ。
そう言う力もなく、へたりとベットに横たわっていた。
いつもこんな感じである。
