「ええっと……」

 声を上ずらせながら、(たける)はみんなに聞こえるように予告状を読み上げた。

 オカルト少年が興奮するのも無理はない。カードの裏には、本物の怪人からの恐るべき挑戦の意思が書かれているのだ。

「諸君、少年探偵団の結成おめでとう。話は聞かせてもらった。私に挑戦するとはなかなかに勇ましいことだね。しかしながら賢明なる団員諸君に忠告しておこう。この八百面相を捕らえるなどという無謀な考えは即刻捨てることだ。お子様はお子様らしく、たまった夏休みの宿題でも片づけていたまえ。一応次の狙いを予告しておくがね。しかしまあ、知ったところで君たちにはどうすることもできないだろうよ」

 なんて無礼な文面なんだ。まるで、今にも嘲笑うような声が聞こえてきそうだ。読み上げた温厚な彼でさえも、少しムッとしている。ガブラなんかは、早くも頭から湯気が出始めていた。

「アニマル軍の精鋭をお子様呼ばわりとはな。いいだろう、思い知らせてくれる」
「ククッ……しかし、敵の情報収集能力もなかなかなもんだぜ」
「ほんと。『抹茶』さんの探偵ごっこに素早く乗ってくれるなんて意外ですぅ」
「それにしても敵ながらあっぱれ!東京タワーを盗むとは、大胆な犯行予告でありますな」
「確かに。なかなかクールな選択だぜ」
「ちょっと待ってよ、東京タワーって……やっぱりあの東京タワーなわけ?」
「そうだろうね。竣工(しゅんこう)昭和三十三年、全高三百三十三メートルにして重量四千トン。デジタルテレビに送信する電波塔としての目的の他、大展望を備えた観光施設だよ」
「我が弟ながら、無駄なことをよく知ってるわね」

 呆れ顔の心愛の目の前で、チッチッとノークが舌を鳴らす。

「いやいや、東京タワーと言ったらなんたって怪獣でしょ。ガメラやゴジラにモスラにギャオスに……倒しまくりだもんねぇ。侵略者としては一度破壊しておきたい建造物でありますよ」
「まあ、そんなに破壊されてもすぐに再建されるなんて、地球の科学力も大したものですね……てゆーか、文芸復興?」

 色々と勘違いしている人たちはさておき。

「地球侵略において、我々が(さき)んじていると思い知らせてやらねばなるまい」

 グルグルと、犬のごとくガブラが唸った。しかし少年探偵団という名目で、心愛と一緒に遊べるのが気に入り始めているだけだという感じでもある。