「クク……んじゃ始めるぜ。半強制型状況作成装置および、少年探偵団セット起動開始!ポチっと〜」

 彼が手にしたボタンを押した途端、全員のワッペンが光り出した。地下の秘密基地にあるマルドの研究室から、各人に何かが転送されてくるらしい。

「な、なによこれ!?」
「うわぁー!面白ーい」
「なんですかこれ?てゆーか、装備支給?」
「そういうこった。半強制型状況作成装置の効果でね。あんたらは、より少年探偵団らしくなるって寸法よ。例えばこいつだな」
「これは!?」

 ノークが頼んだ以上、アニマルプラネットの科学力を無駄に駆使したリアルな「探偵ごっこ」ができるよう、団員に装備品が支給されるのは当然のことだ。例えばこの名札は……。

「七つ道具その①団員名札……勝手にあだ名がつけられ、団員同士はこのあだ名で呼び合ってしまうぜ。ククッ……」
「何ですって!?冗談じゃないわよ『うさ耳メガネ』!」

 普通に「マルド」と呼んだつもりだった心愛は、びっくりして口をつぐんだ。精神的にかなり傷ついた彼は、うぐっとうめいてから自分の名札を見せる。そこには「うさ耳メガネ」とマジックで書かれたあだ名が。

「我ながら効いたぜ。けど、少年探偵団ってのはこうやってあだ名で呼び合うもんさ。なぁ、『怪力女』」
「だ〜れが『怪力女』じゃい!」

 マルドを部屋の隅まで蹴飛ばしてから、胸元を見た見た彼女はハッと息を呑んだ。名札には、デカデカと「怪力女」と書かれているではないか!

「ちょっとやだ!やめてよ、こんなあだ名!何これっ、剥がれない……!」
「事件解決するまで絶対に取れないぜ。ちなみに服を着替えても団員として活動中の場合、名札が転送されるからな、ククッ……」

 フラフラと起き上がった彼が、意地の悪い含み笑いを浮かべた。事態を理解した他の面々は、自分の名札を確認する。