ある街の花屋の向かいにあるアパートの2階。その一室のベランダに私はいる。

いつもと変わらない何気ない日常。
駅へ急ぐ学生。のんびりお散歩中のおばあさん。OPENの用意を始めるお隣の雑貨屋さん。

植木鉢から外を見るのは大好きだ。ここは日差しもよく、ご主人も毎日出かける前にお水をくれる。至れり尽くせりとはこういうことを言うのかな。

風になびいてふ、とアパートの玄関先に目が行く。ふわふわのヒヨコ色の花弁が特徴的な人がいた。こんな所にも同じ種族がいたんだな。

その人は気持ちよさそうに陽射しを浴びて私と同じように風になびいている。
唯一違うとすれば、その人はコンクリートの隙間から生えていた。


声をかけてみようか。
ふ、とそう思った。何を話しかけようかまごついていると、下からの視線。
目が合う。

彼「いいお天気ですね。昨日の雨も気持ちの良いものだったけど、僕はやっぱりお日様が1番好きだな。」

私「ええ。本当に良いお天気。伸びをしたいくらい!」


驚いたけれど、我ながら上手く返せたと思う。
これが彼との最初の出会いだった。