この言い争いは引っ越し業者さんが帰ったあとでよかった、と心底思う。
段ボールが積み重ねられ、空いた部屋に入れ込もうとすれば反対された。



「プライベートがあったっていいじゃないの」

「ダメだ、お前の荷物はあっちに入れると決めた」



指差す先は翔太の部屋。
同じ家に住んでるのに自室が同じなんて。



「ばかげてるわ」

「お前は全部、俺様のもん」

「だから、所有物じゃ……な、い、…わ」



腰を抱かれ、近付いた距離に言葉がすんなりと出てこなかった。
合わさった唇に、膝が落ちそうになる。



「いいな?」



唇が離れたとき有無を言わせない確認に頷く以外の動作をあたしは持ち合わせていなかった。



結局、あたしは翔太のものでその穏やかな眼にも弱いのだわ。