腕を引かれるまま最上階の角部屋に行く。
どこぞのおぼっちゃんよ。


もう、イヤだ。
あたし、なんでこんなに翔太に振り回されないといけないの。

部屋に押し込められ背後で鍵が閉まる音がして我慢も限界に達した。


あたしのこと、翔太はなんでも知ってるくせにあたしはこいつのこと何も知らない。
あたし、離れたいのよ。
付きまとうのはやめて、あたしは静かに暮らしたい。あんたのあの眼に追われないどこかで。


あの田舎から電車とバスで4時間のこの街もその“どこか”じゃない、ならあたしはあんたから逃げられないじゃない。



「真知、泣いてんのか?」

「泣いてない、」

「………上がれ」



こんなときまで命令口調なのね。
涙、止めなきゃ。
翔太に飲まれてしまう。