ハザードを出して停まっていた車に乗り込んで、たった数分の時間をともに過ごす。

あたし、翔太の助手席ばかり乗ってるわ。
向かう先はもちろん、あの高級マンション。


一発で地下の駐車場に入れてエンジンを切ると、ドアを開け、なかなか降りないあたしを分かっていたのか、回り込んであたしの腕を掴んだ。

翔太に近い左手を掴もうとして、手が伸ばされる。さっきと同じ、左手。少し赤くなってて、痛い。


それに気付いたのかどうか、分からないけど伸ばされた手は戸惑うように一回躊躇して、結局左手を掴んだ。