「なあ、真知」



高そうなマンションの地下駐車場に止まったあと、下りる前に声がかかる。

また、なに。
はやく、はやく一人になりたい。
ここからなら歩いて帰れる。すっかり暗くなった辺りに眼をやる。お風呂入って、ビール飲んで、やなこと全部忘れて寝よう。
明日は不動産にでも行っていい場所を探そう。ちょうど契約も切れる頃だし。



「真知、俺はなんて言えばいい?」

「……なにをよ」



なんて顔してるの、なんでそんな。



「か、帰る」



慌てて下りてスーツケースを持って、早歩きをする。
翔太に、翔太のペースに飲まれないように。