「………ここどこ、」



ゆっくりと閉じたまぶたを押し上げて、ぱちぱちと数度動かしたら、次第に明けてきた視界。焦点が定まらない目に、寝ぼけた頭、かすれた声で聞けば呟いた。

返ってきた声に状況をすばやく理解する。




「家の近く、」



そういえば翔太の車の中だったんだ……。



「なんであたしの家の場所をあんたが知ってるのよ」



住所も、家にあげたことすらないのに。



「…………俺様のだ、」

「え、でもここ……」



明らかに見覚えがある風景に偶然にもこいつは近所に引越してきたのか、と思う。


こいつのことだ、偶然なんてことはないわ、きっと。

あたし、引っ越そうかしら。
翔太の遠くに行きたい。実家に翔太がいないなら仕事やめて、戻ってもいい。
翔太の、翔太のいないとこ。