マーメイド・セレナーデ

「…………多分、一方的だったんだわ」



そう。
大嫌いと叫ばれて鋭い眼に睨まれて何が何だかわからないまま逃げ出したあの日から。
何度も何度も自問自答を繰り返して出した答えは。



「…………声、そっくりなんです」

「声?」

「はい、鉄平さんの声。3年ぶりにあいつに呼ばれた、と思ってしまって」



ちゃん付けで呼んだりするような男じゃないですけど、
視界が潤んで目の前の鉄平さんの顔が歪む。それでも言葉を紡ぐ。

鉄平さんの口が開くのは、かろうじて見えた。



「真知、ちゃん………………真知?」



止めて、欲しかった。
そうやってあたしを陥れるように囁くのは。

雰囲気に、酔ってしまった。


忘れかけて、嫌いになったと思っていた矢先にこの不意打ち。
あたしの人生はきっと一生直接的にしろ間接的にしろ、あいつに振り回される。



「泣くなって」



だめ、だめだわ。
わかっているけど、もうだめ。