マーメイド・セレナーデ

生一杯、と店員さんに呼びかけるのを考え深げに目にいれる。
もし、あいつとあのまま一緒に居ればこういう仕草を見ることができたのかもしれない。

あいつと同じ声をして、仕草もどことなく似ているように見えてくる。

もしこれで真知、と呼ばれたらあたしはどうなってしまうのかしら。



「ねえ真知ちゃん。………………そんなに好き?」



真知、にぴくりと身体を震わして何事もなかったように振舞えたけれど後の言葉には驚きを隠せない。

何を言うのだ、と一瞬にして夢から覚めた心地になる。
何が好きと言うの?鉄平さんは、何を知ってるの?

まだ、ビールは1杯目。一気にあれほど喉の奥に流し込む人だ、これだけのお酒で酔いが回ったってことはありえない。


本当は昨日期待してたんだけどな、と言うとあたしに有無を言わせないようにジョッキに入った残りを飲み干す。

するとタイミングよく追加の生がドンとテーブルに置かれた。
だからまたあたしはタイミングを逃す。鉄平さんはそれをまた一気に流し込んだ。