マーメイド・セレナーデ

「やっぱりどこかで見た顔だと思ったはずだ」

「………いらっしゃい、ませ」



あたしはずっとアパレル系で働きたいと思っていたの。
洋服は大好きだし、新作が出ると聞いたらまっさきに買いに行きたいくらい。

だから大学生でも働けるようなお店を探していたの。
それはビルのなかに出店しているお店で、週末は人が溢れる。主に取り扱うのはレディースだけどメンズも多少置いてあるから男性客も少なくはない。
デザインが若者向けで、年齢層があたしと同じくらい、というのも魅力的だった。



「鉄平さん……」

「俺、こないだ妹に連れられてここ来たからさー。そのとき見たのかも」


目が合って入ってくると同時に一人頷く鉄平さんを見てあたしは畳んでいた洋服が危うく手から落ちて行くところだった。