覆いかぶさっていた暗さがなくなり、どうしたのかと思えばまた暗さが戻ってくる。



「こっちむけ」

「なによ、………いたっ」



あごを乱暴に掴まれ、正面を向かされる。
近づいてくる顔にまたか、と思いつつ眼を閉じた。


重ねられた唇から冷たい液体が流れ込んで、反射的に飲み込んだ。



「こほっ、……み、ず?」

「飲め」



普通にコップを渡してくれればいいものを。

数回繰り返してもういらないと突っぱねた。



「お風呂、入ろう」



水を飲んで楽になるとベタベタした身体が気になり始めた。



「あんたは、……入ってるわね」



翔太の下から抜け出して、あたしと入れ違うように布団に寝転がる様子が見える。



「ここで寝る、お前に拒否権はねえから。しょうがねえだろ、お前もあわせろ」



嫌がる顔に同じ凄みのある顔付きで返され、肩を竦めてわかったと合図してスーツケースから着替えを取り出し寝転がる翔太を置いて部屋をあとにした。



しょうがない、……ね。