思わず手が出てしまった。
ビンタなんて、可愛い女の子がするから可愛いのであって。

それでもそんな失礼なこと言われて黙ってなんか入られない。



「だいたい!翔太にあたしが似合わないってことぐらいわかってるわよ!部外者が口出ししないで」



自分でも子どもじみた行動だと思うけれど、ぷいとそっぽを向いてもうこの人を視界に入れたくもなかった。



「……柏木くんには私から報告するからね。こってり絞られなさいよ。香坂さん、ごめんなさい。ちゃんと幹彦くんには後で謝らせるから」



そして、ちらりと彼女は腕時計に視線を走らせると急ぎましょうとあたしの背中に手を当てて前へと促す。
彼女は最後に幹彦くんとらやに一瞥をくれるのを忘れなかった。



「覚悟しておきなさいよ、幹彦くん。柏木くんの機嫌が悪くなったらどうなるか幹彦くんも知ってるでしょう。私も牧くんも味方しないからね」