チェックアウトも済ませて誘われるままに車に乗り込むと牧さんも口数が減って、会話が無い気まずい時間が訪れる。

車の流れも止まりがちになって歩いてる方が速いんじゃないかってくらいで。

どこに向かうのか知らされてないあたしは外を眺めて情報を集めてみるけど地理に疎いこの場所では何の役にも立たなくてほう、と息を吐いた。
いつもの、と言うほど牧さんを知ってるわけではないけれど車内の空気は張り詰めていてどこか居心地が悪い。

翔太とそれほど長く一緒に過ごすことはなかったけれど、翔太が今の牧さんのように張り詰めて空気を醸し出すことはなかった。

もしかして、無理してたの。
それとも、本当にありのままの状態だったのかしら。


あたしの知らない翔太を知ってる牧さんと一緒に居ると翔太のことを何も知らないと感じてしまう。
18まではずっと一緒に、誰よりもそばに居たというのに。

あたしは18から24までの6年間。翔太のことを何も知らない。


怯えてばかりで翔太に歩み寄ろうとしなかったから。
鋭い眼に睨まれると思うと何もできなかったから。


今日、全部わかると翔太は言った。

ならあたしはそれを信じる。

翔太を疑ったことなんてないけど、信じる。