意識が急浮上して、目を開いても暗闇に慣れていない目は真っ暗闇で何もその目に映さない。


不安に襲われてしょうた、と声に出したつもりが自分の耳には息を出しただけの掠れた音にしか聞こえない。
コホッと小さく乾燥した咳払いをしてもう一度、彼の名前を呼んだ。

応えは、ない。
心拍数が上昇するのが寝ぼけた頭でもはっきりと理解した。
動悸がおさまらない。


両腕で上半身を支えて起き上がる。
いつものベッドよりも弾力があって、ホテルのベッドに居ることを思いだす。そして、あたしがとった行動も。

相手にしてくれない翔太におやすみも言わず、ふて寝しちゃったんだったわ。

暗闇に目が慣れてきた頃、辺りの様子がぼんやりとだが見えてくる。
目を凝らして翔太を探すけれど、何も見付からない。


焦ってもう一度、名前を呼ぼうとしたときに、同じように掠れた色っぽい声がすぐ下から聞こえた。