「しょ、翔太?」

『何だよ』



だけどすぐに返って来た声に安心して次の言葉を考えていなかった。



『……牧が、いらねぇこと言ったんだろ?』



いらないこと?
仕事についてちょこっとだけ話したこと?それとも翔太がしょげてるって言ったことかしら?



『気にすんな、23まで帰んねぇけど電話は、……する。牧がうるせぇし』

「うん、」



忙しい毎日でも翔太の声が聞こえるとなると頑張ろうと思える。



『じゃ、まだ仕事残ってんだ』

「お休み」

『ああ、』



その声を最後に翔太はあたしに未練などないようにプツリと切るの。
無機質な電子音にため息をついた。

声を聞いて、嬉しくなってでも、簡単に断ち切るような切り方にまた落ちる。
あたしばかり翔太に振り回されてるの。


嫌な思いの詰まった雑誌は捨ててしまおうと見渡してそれがない。
目の付くところにない。

昨日までは、いや今朝までは確かにこのローテーブルにあったはずなのに。


どこにやったのかしら。
ざっと辺りを見渡して見付からないとそれは簡単に意識から外れてしまった。