マーメイド・セレナーデ

ずんずんと進む彼の背中を見てふと感じたこと。
見慣れたものだった。



「その服……」

「あ、やっぱりわかる?」



ウチの店の服にそっくりだった。
実際には同じデザインではなかったけれど、なんというか雰囲気が同じデザイナーのような気がした。



「でも、そんなの店にないわ」

「ああ、新作なんだ。俺、知り合いがいるからちょこちょこ試しにもらったり。いやー、本当俺の好みなんだよね」



牧さんの言葉にちょっと違和感を感じたけど、その端を掴む前に喫茶店のドアベルがなって店員の声でうやむやになってしまった。