同じ家にいるのに冷戦状態のままあたしは支度をして家を出た。

翔太は寝室から、出てこなかった。
あたしも、このままではいけないと思いつつも翔太をわざわざ関わりを持とうとは思えなかったから行ってきますの言葉さえ出さずに家を出てしまった。


歩きながらあたしの意識はずっと携帯に向かっている。翔太から連絡が来ないか期待している。
そんなに気になるなら、少しでも顔を見ればよかったのに、言葉を交わせばよかったのに。

ごめん、と一言言うだけでどれだけ、今が違ったか。

後悔しても遅いのだけれど。
いいや、後悔してない振りをして、翔太からのアプローチを待ってる。



終始携帯ばかりに気をかけていたけれど職場に着いても連絡がなかった。
やっぱりという思いのほうが強かったけれど、自分から連絡できないのを棚に上げてどうしてくれないの、という思いもある。


店が開いてからも携帯ばかりに気が向いて上の空。来ないってことくらいわかってたはずなのに、わたしも随分往生際が悪い。

そのときコールが鳴った。
あたしの携帯は一般の固定電話の着信音とは違うのに身体は反応してしまった。

電話にはあたしが一番近くに居たから落ち込みがちな頭を振り払って一歩足を進めた。

一つ深呼吸して手を伸ばす。