朝は仕事の支度に家のこともしなくちゃいけなくて、忙しい。
自分のことだけじゃなくて、ましてや一緒に暮らしてる人がいると尚更。



「翔太、まだ?」



早く洗面台をあけて、と促せば歯ブラシをくわえた翔太が顔を出す。



「先使え」



シャコシャコと手を動かし歯を磨きながら出て来た翔太とすれ違い洗面台の前に立つ。さっきスイッチを入れたアイロンで髪を巻いていると鏡にあたしの頭より高い位置に翔太の顔が映る。



「あー、言い忘れてたけど今日から3日間出張だから。これから1ヶ月くらい多くなる」



鏡越しに目が合って、簡単に翔太は告げた。
どうゆうこと、と振り返って今度は直に翔太の目を見る。



「焦げてる、くさい」



あたしの質問に答えるどころか、あてたままだったアイロンから匂った髪が焦げる臭いに顔をしかめた。



「ちゃんと言ったからな、明々後日は晩飯もいらねぇ。最終便で帰るから」

「ちょっと、どこに」

「東京」



さらりと言った言葉でどれだけあたしが置いて行かれた気持ちになったかなんて翔太はわからないんだわ。