マーメイド・セレナーデ

女の子にとって助手席がどんなものかこの男はわかっているのかしら。

その場所がどんなに 特別 かってこと。


だけどあたしはこの男の 特別 に興味はないし、敢えていうなら違う意味での特別。
たがらあたしと翔太の間に会話はない。
したいとも思わない、ただかけられた洋楽に合わせて鼻唄が聞こえるだけ。


がたがたと道が悪く揺れるのを我慢して、会うつもりなど毛頭なかった男と2人きりを我慢して。

本当に最悪。


あたしの家に着いて車が停める。
すぐに下りようと思うが、ぐっと抑えた。


縁側からじっとこちらを窺っている両親、祖父母がいるからだ。

ここで失態を見せちゃだめだ。
わかっている、冷静に。



「見てんぞ、下りるんじゃねえの」



わかってるくせにニヤニヤとわざとそう言う奴が憎たらしい。