ふるふる、と首を横に振ってこれ以上声に出してなんでって聞かないように唇を噛み締める。
口を閉ざして、その感情に流されないように。

翔太、って声に出さないように。



「髪、食ってる」



苦笑気味の声は思いも寄らず近くから聞こえた。背もたれに肘をついてる。首を振った勢いで口に入ってしまった髪の毛を優しく人差し指で払ってもらう。

指先まで綺麗なのね。

指を追って、その腕が背もたれに着くのを見届けて顔を上げた。



「ブサイク面してんな」

「うるさいわねっ」

「……あと少しだから我慢しとけ?な?」



なにがあと少しよ、って聞きたいんだけどやっぱり言うことが出来なくて代わりにん、と声とは言いづらい音で答えた。