広いリビングにあたしだけになってしまった。怒鳴り声で翔太はあの部屋にいることはわかっているの。だけど今は、気配が感じない。一人しかいない錯覚を覚えてしまうの。


ローテーブルにはコーヒーカップが3つ。
ちゃんと翔太も牧さんも存在していたというのにどうしてか淋しくなっちゃう。


それに、今こんなふうに思うのは6年前、勢いに任せて翔太の隣を逃げ出してから再会するまでの翔太のことを全く知らないから。

学校が一緒、と言われてもどんな学校に行っていたのかわからないの。

以前は翔太のことを1番知ってるのはあたしって自信を持って言えたけど、もうあたしは翔太の1番遠くにいるんじゃないのかしら、って不安になっちゃう。

仕事だって、家に持ち込んだことがないからわからない。
あの空き部屋で仕事をしているときもあるみたいだけどあたしが近付くことを極端に嫌がる。


いつか、わかる日が来ると言うけど。
いくらなんでも不安なるわ。



ココアを零して買い替えたばかりの白い絨毯。ふわふわで手触りがいいのだけど今はどうしてもそれがすきになれないの。



「やっと帰ったかよ……」