「今、人気だよねー。俺でも知ってるブランドだしな」



ケラケラ笑う牧さんを見て今の会話に何かおかしいところがあったかしら、と疑問に思う。
けれど、それを口に出す前に、牧さんは次の話題へと移って行く。

言葉の端々に翔太をからかってる様子が窺えて、親密さを醸し出している。
ずるい、と脳裏に浮かんだ言葉とともに嫉妬を覚えた。

あたしが、そんなこと言える立場でもないのに。


嫉妬の嵐に捕まらないように、新たな疑問を持ち出した。
牧さんは何をやってる人なのかしら、と新しい疑問を口に出す前に牧さんは立ち上がる。



「翔太、俺帰るぞー」



壁越しに２度とくるな、と怒鳴り声が届いて、また牧さんは笑った。



「またね、真知ちゃん。翔太がこれ以上拗ねる前に退散するよ」



そう言って帰っていった牧さん。嵐のような人だったわ。