『アタシ達……所詮、姉弟だもんね』

 否定してほしくて言ったにも関わらず、冷めた眼差しを逸らしただけの李斗に、何も言わない事が答えだと悟る。

 アタシが地元の大学に行くことを辞め、東京の大学を受験したのは、李斗と離れて暮らす方がいいと思ったから──

 東京の大学に通いながら、一人暮らしを始めて、1年と数か月。大学の行事やバイトを理由に、アタシは一度も帰省していなかった。もちろん、李斗とも会っていない。LINEで数回ほどやりとりはしたけれど、その内容はといえば、家族としての伝言みたいなことばかりで。今年に至っては、年明けに李斗から『明けましておめでとう』LINEが届いたきり、何の連絡もしていなかった。

 アタシはベッドからゆっくり体を起こすと、出窓を開けてベランダに出た。昼間の暑さを残したままの夜風が、前髪をふわりと揺らす。すっかり暮れた濃紺の空を見上げながら、李斗は元気にしているのかと思う自分に、溜息まじりの薄い笑みを浮かべた。

 昨年の夏は、こうして空を見上げながら、ひとり泣いてばかりいたっけ……そんな事を思って、ずっとはずせずにいたミサンガをつけた左手首を見つめた。

 (えっ!? ない!?)

 いつの間に切れたのか、なくなっていたミサンガを弾かれた様に慌てて探す。ベランダから部屋に戻り、家の中をあちこちバタバタと探したけれど見つからず……諦めてベランダにもう一度出ようとした時、カーテンに隠れる様に落ちていたミサンガを見つけた。