思いがけず間近に迫っていた李斗の顔に、一瞬にして眠気が飛ぶ。それでも思考の回転は寝起きの様な鈍さで、ほんの少しでも動いたら、キスをしてしまいそうな距離に、見つめ合う瞳さえ逸らせずにいた。二人だけの薄闇は、テレビの光に明滅だけを繰り返し、音は流れているのに、ひどく静寂を感じる。李斗の唇がそっとアタシの唇に触れて……躊躇いを覚えながらも優しく重なった。そんな2人の姿はテレビの光に照らされ、後方に一つの影として投影される。血の繋がりはなくても、家族なのに……姉弟なのに……それでも想いを止める事は出来なくて、誰にも言えない秘密の恋が、そこから静かに始まった。
同じ高校に通いながら、学校帰りに駅で待ち合わせをして、誰にも会わない遠い街へ2人きりで出かけたり。時には家族旅行で、水族館にもアミューズメントパークにも行った。ずっと一緒にいようねって約束のミサンガを色違いで付けても、仲のいい姉弟アピールでカムフラージュ。それが悪いことだなんて感覚と認識は、いつの間にかアタシの中でだけ薄れていたのかもしれない。
熱を帯びたままの夏が過ぎて、秋の気配が憂いを誘う頃から、李斗とたわいもない喧嘩をする事が増えていた。
『誰か他に好きな子できた?』
アタシの素直じゃない質問に、李斗が呆れた様な眼差しを向けて訊く。
『何で?』
最近、LINEの返信遅いし……李斗が何考えてるかわかんない……そう言いたかったけど、言葉が気持ちが声にならなくて流れた沈黙の後、
『別に』
あまりに中途半端な李斗の冷たい一言が、アタシをもっと卑屈にした。
同じ高校に通いながら、学校帰りに駅で待ち合わせをして、誰にも会わない遠い街へ2人きりで出かけたり。時には家族旅行で、水族館にもアミューズメントパークにも行った。ずっと一緒にいようねって約束のミサンガを色違いで付けても、仲のいい姉弟アピールでカムフラージュ。それが悪いことだなんて感覚と認識は、いつの間にかアタシの中でだけ薄れていたのかもしれない。
熱を帯びたままの夏が過ぎて、秋の気配が憂いを誘う頃から、李斗とたわいもない喧嘩をする事が増えていた。
『誰か他に好きな子できた?』
アタシの素直じゃない質問に、李斗が呆れた様な眼差しを向けて訊く。
『何で?』
最近、LINEの返信遅いし……李斗が何考えてるかわかんない……そう言いたかったけど、言葉が気持ちが声にならなくて流れた沈黙の後、
『別に』
あまりに中途半端な李斗の冷たい一言が、アタシをもっと卑屈にした。


