水族館からの帰り道、都心から少し離れたアパートに向かって、電車は走る。ドア付近のスタンションポールに寄りかかりながら、流れる車窓をぼんやりと見つめ、李斗の事を考えていた。それを打ち消そうとすればするほど、それは波紋が広がる様に、どんどんと大きく波を打つ。
どんなに想ったところでどうしようもないのなら、いっそ誰かと付き合ってしまう方が、今のアタシにとってはいいことなのかもしれない……そんな風に思い直して、賀正の事を考えようとした。でも、切替スイッチのない心に溢れるのは、李斗の事ばかり。
口が悪くて、いつもどこか不機嫌で。年下のくせに、生意気で。無口で掴みどころがなくて。何を考えているのか全然わからない。李斗の悪いところをいくつあげてみたところで、悪あがきにしかならない事に気付く。それはすべて「愛しい」という感情に繋がり、同時に「切なさ」や「もどかしさ」や「辛さ」までをも生み出す。
無意識にこぼれた深い溜息で我に返り、気を逸らす様に覗き込んだ車窓には、まだ青みの残る空に茜色の雲が棚引いていた。
どんなに想ったところでどうしようもないのなら、いっそ誰かと付き合ってしまう方が、今のアタシにとってはいいことなのかもしれない……そんな風に思い直して、賀正の事を考えようとした。でも、切替スイッチのない心に溢れるのは、李斗の事ばかり。
口が悪くて、いつもどこか不機嫌で。年下のくせに、生意気で。無口で掴みどころがなくて。何を考えているのか全然わからない。李斗の悪いところをいくつあげてみたところで、悪あがきにしかならない事に気付く。それはすべて「愛しい」という感情に繋がり、同時に「切なさ」や「もどかしさ」や「辛さ」までをも生み出す。
無意識にこぼれた深い溜息で我に返り、気を逸らす様に覗き込んだ車窓には、まだ青みの残る空に茜色の雲が棚引いていた。


