屋外エリアには、ペンギンやアシカやカワウソがいて、賀正は「触りてー!」を連呼しながらはしゃいでいた。

 「カワウソって一夫一妻制の動物で、相手を決めたら一生浮気しないんだってさ」

 得意気な賀正と知らなかったカワウソの生態に、アタシもちょっと関心する。

 「人間より、よっぽどカワウソの方が一途だね」

 無意識にこぼれたアタシの言葉に、賀正は少し驚き顔で小首を傾げた。そんな賀正に誰にも話した事のない話をしそうになって、アタシは平静を装いながら、それに変わる言い訳を探した。

 「離婚したとか、再婚したとか、ネットニュースによく載ってるじゃん?」

 「それな」

 賀正は妙に納得した様子で、何が可笑しいのかケラケラと笑う。賀正はそう、いつだって楽しそうに笑う。いつもどこか不愛想な“誰か”とは正反対だ。不意に対比してしまったその瞬間、

 「次、行くぞ」

 賀正がアタシの手を取り、引っ張る様に歩き出す。脳裏によぎった残像に動揺したアタシは、突拍子もなく繋がれた手をほどくタイミングさえ計れずにいた。