アタシはそれを指先で拾い上げると、安堵の溜息をついて、そのままベランダに出た。切れたミサンガは頼りない糸みたいに、ひらひらと風に揺れながら、手を離せば飛んで行ってしまいそう。今更のタイミングで切れたミサンガに、アタシは自分勝手もいいところで思いを巡らせた。これはきっと、李斗への恋心をなくすべきだっていう合図なんだ。たとえ血が繋がっていなくても、アタシと李斗は家族で……きっとそれは、これから先も続いていくであろう2人のリアル。変えたくても変えられない、変えてはいけない。それなら……と手のひらに切れたミサンガを握りしめた。

 衝動に駆られて、スカートのポケットから、もう片方の手でスマホを取り出し、LINEを開く。

 【今日、水族館でカワウソ見たよ。カワウソって一夫一妻制の動物なんだって】

 賀正の受け売りを李斗に送信してみた。どうせ既読なんてすぐつかないと思ったのに、返信までも秒の勢いだった。

 【タツノオトシゴ】

 意味不明な単語の返しに、?マークで送信する。

 【タツノオトシゴも一生に一匹の相手とだけ交尾するらしい】

 雑学チックな李斗の返信に、アタシは思わず小さく吹き出して、スマホをまたポケットにしまった。