私は口角を、上げた
結果がどうであれ笑顔でいると決めたから

半分は、そうしていないと歪んでしまいそうだっだからかもしれない



逃げない
私は今日、その言葉を聞きにきたから




「付き合うことは考えてない」




三秒、時間が止まった



ゆっくりと目を閉じて、またゆっくりと開けた

君の声は、揺らがない答えを表していた




「ありがとう」



たった5文字
精一杯だった




カイちゃんに返ってきてもらって、すぐに誰にも目につかない場所へと急いだ


公共の場で、焦りなんて見せたくない
必死になるべく普通に歩いて、普通の表情で

待っていたコンちゃんは心配そうにこっちを見ていた
一度は私を裏切った女
今でも信用できない
でも、一緒に過ごした時間、全部が嘘ではなかったよね


「終わったよ」


「…」


「大丈夫だよ
すごくスッキリした
協力ありがとう」


「がんばったね」


その言葉は、今は誰からでも救いになるよ






そのあとは、出来事が夢だったかのように普通だった
喋って、笑って、飲んで


いつの間にか羽目を外すような飲み方はしなくなったけど


「バイバイ」


「じゃあね」


それぞれが帰り電車に乗って
途中まで同じ帰り道、コンちゃんは何も言わなかった