全て、今の私には痛いほどわかるから

それなのに、上手に言葉を並べられない
何もできない、してあげられない
そんな自分の無力さが悔しい


「ごめんね…私…側にいてあげることしかできなくて…っごめん」

ふるふると顔を横に振りながら
「側にいてくれるだけで、いい」
今にも消えそうな、果てしなく小さな声で呟いた言葉が聞こえた

その夜、彼が泣き止むまで、頭を撫でたり、背中を優しくさすり続けた
力一杯抱きしめて、まるで子供をあやすように

それに対して向こうもギュッと抱きしめ返してくるから、温もりを求めて
胸の中で涙を流し続けた

そんな、あまりにも可愛い子供みたいな姿に、どうしようもない愛しさを覚えた

こんな時にって思う

でも、彼のこんな姿、きっと私しか知らない
今、ここにいる私しか知ることができない

特別な存在であることが嬉しくて

誰も知らない彼を自分だけが知ってる事実がとてつもなく嬉しかった


抱きしめながら眠る彼をなんと例えたらいいのだろう

さっきふるふると首をふった君の姿はまるで小さな子犬で、何とも言えない気持ち

でもこの子は、私が守らないと
そう強く思ったの

私がいなかったら、きっと1人で苦しんで、どうしようない暗闇に堕ちていた

1人で苦しまないでくれてよかった
私がいてあげれてよかった


次の朝、心配しながらも会社へ向かう彼を見届けてから、私も会社へと向かった

彼が朝行ってくれた「ありがとう」
その何気ない言葉が、私が今日を頑張る原動力となる