ぎゅーっと締まった紐は私が結んだ時とは格段に違く、安定感抜群

さすが馬鹿力のユーマ
時々話題になって腕相撲で争うの見たことはあるけど、今まで周りでユーマに勝った人を見たことがない

「はいよ」

「ありがとう〜!すごい!」


ゲレンデに向かう途中、ミサがこそっと耳打ちしてきた

「何さっきの、いい感じじゃ〜ん」 

ニヤニヤしながら覗き込んでくる


ここ半年で仲良くなったミサは、私のユーマへの気持ちは知らない
その半年はユーマに会ってなかった期間だし

「そんなことないよ
去年もやってもらったからやってもらっただけ!ほら、私力ないじゃん?」

ミサとカイちゃんはスキー
私とユーマはボード

同じ方が降りる時楽という理由で、リフトを一緒に座る
リフトが上へ到達するまでの数分間、
無邪気に話し続ける君を横に、2人っきりの空間に緊張を覚えた


ミサもカイちゃんも、もちろん本人も私の気持ちなんて知らない
ここで私の心の中を覗けるのは私しかいない


東京のバスから今までで、気を張ってなかったら、早くも奥の扉開いちゃっていたよ
「好き」を思い出していた

だけど、あの日に断ち切った想いは
蘇らせてはいけない
ここで思い出したら、私は完全に溺れてしまう
抜け出せないくらい深くへ

そうしたら私が泣くことがわかったから
だから辞めたんじゃない



「つかれたー!」
「風呂入ってから酒買いに行こーぜ!」
「ナイター行かなくていーの?」
「んー今日はいいや」

一日中滑り終えた私たちの楽しみ
もちろん夜の飲み会
これも楽しいんだよなー
思いっきり体動かした後のお酒って最高に美味しいしね!


大浴場から部屋に戻る途中、ミサが私に問いかけた

「マリってさ…もしかして…」

「ん?」

「ユーマのこと好き?」


驚いたようにミサを見ると、ニマニマと笑みを浮かべてる

「え…」

「やっぱり〜そんな感じした〜」

「な…ん、な…わけないじゃん…!」

咄嗟に歯切れの悪い否定をしたけど…
ミサは疑い100%の目を向けていた

流石に無理あるか

「はぁ…わかった
でも好きだ・っ・ただけ!
かーこーけーい!
昔の話だよ、もう好きじゃない」

「ほんとにぃ〜?」

「ほんとだよ〜!

「それに私には、キョータがいるもん!
今一番好きなのはキョータだよっ!」

「うわ、惚気か!」


夜、笑いながら、お酒とおつまみを抱えて男子部屋へとお邪魔する


楽しみにしていたはずの飲み会が、悲しみに包まれるのに、そう時間はかからなかった

「「「「かんぱ〜い!」」」」

「ね、ユーマって今彼女いんの?!」
初っ端から切り出したのはカイちゃんだった

ドキッ…

大丈夫、どんな答えでも私は受け入れられる
だって、ずっと前に捨てた恋だから

ショックなんて受けないし、大丈夫