クリスマスイブの夜。
俺は、なぜか剛と2人で過ごしていた。

「ビールもらうよ」
両手にビールを持った剛がソファーに座る。

「俺はいいよ。最近酒は控えてるから」
「それって、有香さんのためか?」
聞きにくそうな顔。
「ああ。安定はしているんだがな。一応、いつ呼ばれてもいいように」
「そうか」

剛はビールを俺はノンアルコールドリンクを飲みながら、クリスマス用のオードブルをつまむ。

なんだかんだ言って、すべてを話せるのは剛だけだ。
痛いところも突かれるし、厳しいことを言われることもあるが、俺にとってはありがたい存在ではある。

10年ぶりに突然現れた有香に病気が分かった時、相談できたのも剛だけだった。
医師としてあれだけ多くの患者を診てきているのに、身近な人間となるとこうも動揺するものかと思い知らされた。
そんな俺の愚痴を聞いてくれたのも剛だ。