あーもう。
普段着ないような服を着て、明日鷹先生を怒らせて、私は一体何がしたいんだ。
落ち込みながら、ちょっと早足にロビーを通り越したとき、

「待ちなさい」
後ろから腕を捕まれた。

あ、明日鷹先生。

誰なのかは、見なくても声で分かる。
それに、今は恥ずかしすぎて振り返れない。

「放してください」
掴まれた腕を振り払おうとするけれど、逆にがっちりと両腕を捕まれてしまった。

「落ち着いて」
少し距離を縮め、背中をトントンと落ち着かせるしぐさ。

よかった、いつもの優しい明日鷹先生だ。
ホッと安心して、体の力が抜ける。

しばらくして、明日鷹先生は私の肩に自分の上着を掛けてくれた。

「馬鹿だなあ。なんでこんな格好するんだよ」
「だって・・・」
こんなことになるなんて思ってもいなかった。

「コートをとって来るから、ここで待っていなさい」
そう言うと、私を残しフロントへ向かおうとする。

ええ?
さすがに掛けられた上着のまま1人残されることが恥ずかしく、脱ごうとすると、
「いいからそうしていて」
「でも・・・恥ずかしいから」
「はあ?そんな服着ていられた方が、俺は嫌なんだ。いいから着てろ」
また叱られた。

その後、明日鷹先生がフロントからコートをとってきて、家まで送ってもらった。
紗花は剛先生が送っていくと聞かされた。

送ってもらう車の中、明日鷹先生の説教は続いた。
先生に叱られる生徒のように、私はただ黙って俯いていた。