カレンダーガール

有香さんと私が並び、先生達と向かい合って座る。

「今、整形外科病棟で保管分の麻薬が不明になっているらしいんだ。近いうちに院内調査が入る」
厳しい表情の剛先生。

それって・・・
「待ってください。啓介はそんなことにかかわる人間ではありません」
きっとそういう意味で言われたんだろうと声が大きくなった。

「桜子先生、落ち着いて」
いつもと変わらない声で明日鷹先生は言うけれど、
「きっと何かの間違いです」
納得できない私は言い返してしまった。

「君の気持ちは分かるけど、整形外科で問題が起きているのは事実で、彼の行動に問題があると指摘されているのも事実。毎年何人かの研修医が体調不良を起こしたり、ストレスでドロップアウトするのも事実」

「だからって、啓介を疑うんですか?」
つい立ち上がり、言ってしまった。

「桜子ちゃん、落ち着け」
ちょっとあきれた顔の剛先生。

明日鷹先生は真っ直ぐ私を見てる。

「あのね、別に彼を疑っているわけじゃない。今は待て、動くなって言ってるんだ。彼が行方不明のままとなれば、直ぐに病院も家族も捜索するはずだから、君は待ってなさいって言ってるの」

確かに、明日鷹先生の言うことは正論なんだろう。
下手したら、私が巻き込まれるかもしれないから。
でも、
「嫌です」
私ははっきりと言った。