カレンダーガール


ここまで診察や検査を拒むのは、それだけの理由があるとき。
さっきのレントゲンを拒んだ母親の態度から察するに・・・

「ちょっと待てよ!」
私を阻むように立ちふさがり、父親が怒鳴った。

「必要な検査です。邪魔しないでください」
「父親の俺が必要ないと言ってるんだから、止めろ」
診察室から出ようとする私の腕を、父親がつかんだ。

「放してください」
「だから、旭を返せよ」
もみ合いになる私と父親。

母親も、川上先生も、救急スタッフも、周りにいた患者さんも、みんなが取り囲む。

「警察呼ぶぞ」
凄む父親。

「呼んでください。困るのはあなたでしょう?あなた、旭君に」
「先生、やめなさい」
虐待しているでしょう?と言いかけた私を川上先生が止めた。

危なかった。
根拠もなく「虐待しているでしょう」なんて言えば、事態は最悪なものになるところだった。

「帰るー。僕帰るー」
険悪な空気を感じた旭君が、急に泣き出した。

母親が私の手から旭君を奪う。

「お母さん、あなたが旭君を守らなくてどうするんですか?」
私は腹が立って、つい言ってしまった。

ウ、ウウゥッ。
泣き出す母親。

「先生、もういいから」
結局、私は川上先生に止められた。

重態でもでもない限り、自分の意思で帰ると言う親子を止める方法はない。
分かっているけれど・・・悔しかった。